風の名を持つ花~タマスダレ~

錆朱色や赤褐色、黒紫に黄・オレンジのハロウィンカラーに彩られている花菜ガーデンです。
そんな中、ひときわ目立つ真っ白な花の咲く一角があります。

触れん土ファームをぐるっと取り巻くように咲く【タマスダレ】の花です。学名はZephyranthes candida(ゼフィランサス・カンディダ)ヒガンバナ科ゼフィランサス属。

寒さにも暑さにも強く、育てやすい常緑多年草の小球根です。

南米出身で、明治初期に日本に入り広がりました。白い花を‘玉’に、厚みのある細長い葉が束になって茂る様を‘簾’にに見立てて、和名が付きました。

学名のゼフィランサスはギリシャ語の西風を意味するZephyrosと花を意味するanthosに由来します。自然を擬人化するギリシャ神話では、春から初夏にかけて吹くそよ風の神として‘ゼフィロス’がしばしば登場します。

ボッティチェリの名画「プリマヴェーラ」や「ヴィーナスの誕生」で春の女神フローラの傍らで頬を膨らませて風を送っている姿をご覧になっている方も多いのでは。

顔を寄せてよく見ると、花弁の先にほんのりピンクの色が入り、花芯の明るい緑色と相まって大変美しいものです。乾燥の後のまとまった雨で一気に花茎が上がり咲きだすので、ゼフィランサス属は英語ではレイン・リリーと呼ばれています。

今年は8月から咲き始め、いまだに次々と花を咲かせています。乾燥と降雨が繰り返される気候だったので、長く咲いたのではと思っていましたが、【タマスダレ】は仮軸分枝=成長点の先端が花芽を作って成長が止まるとその少し下から一定の葉を作った後、新たに成長する先端が花芽になることを繰り返す性質を持っているそうです。

恐るべし【タマスダレ】。その強さと生き抜く戦略に感心しますね。